全4回に分け、オーダースーツのプロが考える『スーツの捨て時』『買い替えのタイミング』をご紹介していますが、今回は、私がスーツを捨て時と判断したポイントをいくつかご紹介します。
まずは今回のスーツに関して簡単にご説明します。
ワークスタイル上スーツを着用した状態での動きが多いため、生地を選ぶ上で、Super110’sの生地をチョイス。
そもそも生地の素材によって、スーツ寿命は大きく異なります。
ウールなどの天然素材を使用したスーツは着心地が良く、見た目にも美しいのですが
量販店のスーツに比べデリケートなので正しい手入れが必要です。
一方、量販店などでリーズナブルに販売されているスーツはポリエステルなどの化学繊維を使用していることが多く、丈夫で頑丈ですが独特のテカリがあるために好みが分かれます。
Super〇〇〇’sとは、生地の元となる糸の繊維の細さを示しており、数字が大きくなればなるほど細い糸を使用しているため、柔らかく肌触りは滑らかになりますが、その分デリケートな生地になります。
高級な生地のオーダースーツだからといって、量販店のスーツより寿命が長く、耐久性に優れているということではございません。
それでは今回のスーツについて、「捨て時と判断したワケ」をご紹介させていただきます。
1つ目に気になったのは『テカリ』です。
↑起毛が抜けてしまった ↓当初は表面にも起毛がありました
今回はフランネルスーツなので分かりづらいのですが、部分的に元々のフランネル、いわゆる起毛感が少なくなっている点です。
『テカリ』は、特定の場所に着用時の圧力や生地への摩擦、アイロンのかけ過ぎによる大きな負荷がかかることでスーツの生地に発生する現象です。
本来、スーツ表面は繊維の凹凸があり、動いたり、立ったり、座ったりといった動作によって繊維が潰れ、
生地表面の凹凸が無くなってしまうことでテカリが発生します。
ブラッシングやスチームアイロンをかけても元に戻らない様であれば、繊維が完全に潰れてしまっている可能性があり、寿命を迎えたサインと言えるでしょう。
特に、袖口、お尻や太モモ、内モモ、ヒザなど擦れやすかったり、圧力が加わりやすい部分にみられました。
2つ目に気になったのは『毛玉、毛羽立ち』です。
私の場合ジャケットのアームホール部分に強くみられました。
動きの多い箇所でもあり、合わせて汗をかくことで『毛玉、毛羽立ち』になったと考えられます。
普段は外から見える部分ではないため、袖を外し、毛羽をカットした上でたたきミシン刺しなどで毛羽立ちを抑え込むお直しも可能です。
しかし、店舗に立つスタッフの視点から、私の中では捨て時のポイントとなってしまいました。
3つ目に気になったのは『パンツ、ヒザの抜け』です。
ここでの『抜け』とは、スウェットやニット、ジャージなどで見かけることの多い現象です。
平置きにした際は、膝の部分がくの字になっており、着用の際はヒザが飛び出したように見える状態になっています。
この状態を抜けていると言います。
連続的な着用、長時間の着用により、関節部分に負担がかかり、生地が伸びた状態になります。
連続した着用や長時間の着用が続くと、生地が伸びきった状態から戻りずらくなります。
こちらもやはり、立ち膝での作業が多いことと連続した着用による強い負荷、過度なメンテナンスにより早期的な劣化に繋がったと考えられます。
このような状態でスーツを着用していると、シルエットが美しくないだけでなく、
ややだらしなく見えてしまうので、ビジネスシーンではNGと言えるでしょう。
ここまで、3つのポイントを紹介しましたが、次回は残りの2点についてご説明します。
ぜひご参考下さい。
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